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暗い夜道、
月の光だけを頼りにさ迷う
男は何かに誘われるように、ある場所へと向かう
何があるわけでもない、
しかし、何かが気になる
その何かに誘われるように…
月の光が一層明るくなったとき、男は見つけた
「誰だ、お前」
フードを被っていて、後ろ姿しか見えない
男…?にしては随分と華奢だ
そいつは振り向いた
顔の下半分しか見えないが、それだけでも整っているのがわかる
一瞬驚いているようにも見えたが
次の瞬間、ふ…と微笑んだ
《妖艶》そんな言葉がよく似合う
瞳は見えていないのに
一瞬だった、心を捕らえられたのは
「俺のものになれ」
そんな言葉が口から出ていた
なぜ、そんな言葉が出たのかはわからない
しかし、本能的に目の前のこいつがほしいと思った
口が空いていることから唖然としているのが見てとれる
「ふはっ、あんたおもしろいね」
笑った…、心臓が跳ねる
男のくせに透き通るような、綺麗な声だ
「欲しいものは自分の力で手にいれる、そうだろ?」
もう一度微笑む
とん…、
軽い身のこなしで一瞬だけ近づき、俺の肩に顎を乗せる
「欲しいなら捕まえてみろよ」
耳元にそう言い残し、すぐに離れる
一瞬過ぎて掴むこともできなかった
その男は雲に月の光が遮断されたと同時に暗闇の中に溶け込んだ
触れた肩が熱い、
一瞬だけ見えた髪色、金のような銀のような不思議な色
あの男が唯一残した手掛かり
「必ず探しだす」
顔を出した月にそう呟いた
、
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