事の火種

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「セアァァァッ!!!」 襲い掛かる異形の怪物の頭をハルバートで突き刺し、上に投げ飛ばす。 鮮血の飛沫を払う暇もなく彼女は背後に迫った怪物を斬り捨てる。 醜い断末魔を上げながら絶命していく怪物を踏み潰し、鋭い角を持つ馬型の怪物が彼女へ突撃するが首を跳ね飛ばされていった。 すると左右から猫型の怪物が爪で裂こうと飛び出すが、彼女は絶妙のタイミングでその場から飛び退き躱す。 二体は互いを傷付けないよう勢いを殺し止まる。 瞬間、先程投げ飛ばした怪物が落下し猫型の息の根を止めた。 それを見る間もなく彼女はハルバートを振るい続ける。 戦う者は彼女一人。 そして敵の数は数十を残している、といっても最初は千を超える軍勢だったのだ。 たった一人で全滅まで追い込むとは、これこそ正に一騎当千である。 彼女が身につけているスケイルアーマーは血が染み付き、ヘルムも返り血で真っ赤。 振るっているハルバートも血塗れだが、鋭利な刃は少しも鈍っていない。 その証拠に堅牢な鱗を持つ蜥蜴の怪物を今し方真っ二つにした。 長く戦闘を続け疲労している筈なのに、彼女は勢いを衰えさせることなく戦っている。 そんな勇ましい姿を空から眺める影が一つ。 「アりャりャりャ、アんダけ居ても駄目ナのカ。万単位ナラ倒せるカ?いヤ無理ダナ、ってもう全滅カよ」 やれやれと大袈裟な仕草をする彼は人の形をしているが、先程の怪物とは違った怪物だった。 額から生えている捻れた双角、背中の禍々しい翼、そして竜の尾。 その姿は悪魔そのもので、彼は正真正銘の悪魔だ。 翼を羽撃かせ、全ての怪物を殺し尽くした彼女の前に立つ。 「よくもマア、アの数の魔獣を殺っタもんダ。そっちも俺の事知ってるみタいダし、自己紹介でもしとくカ?」 「……成る程、其方も私の事を知っている様だな」 ヘルムで顔が見えない彼女の声は鈴の音の様に綺麗な声だった。 その声を聴き、悪魔はニヤニヤと笑いながら喋り出す。 「こっちじャア有名ダカラナア、戦乙女サん。俺ハ上位悪魔のリーダー、グルモルド。ぶっちャけて言えバ悪魔族最強ダ」 「やはりか…………、名乗られたのなら此方も返そう。私は人族五大強者が一人、戦乙女ユミカルト・アルトラント。天人類最強だ」 「カカカカ!律儀ダねえユミカルト、別に返サナくてもヨカっタのに」
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