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声を上げて笑うグルモルドに、ユミカルトは首を横に振る。
「いや、そうはいかない。礼儀には礼儀を、暴力には武力を、というのが私のポリシーだからな。それを自ら曲げる訳にはいかないだけだ」
ユミカルトの言葉にグルモルドは悪魔の性で言葉の揚げ足を取ってしまう。
「礼儀にハ礼儀を、って言うナラ顔を見せタラどうダ?俺ダけ顔バレナんて狡いじャナいカ」
「それもそうだな、失礼した」
戦乙女は留め具を外しヘルムを脱ぎ、素顔を晒す。
キリッと揃えられた様に整った顔立ちは凛とした雰囲気を醸し出し、ヘルムから流れ出た長い銀髪は芸術とでも言うべき美しさである。
グルモルドはその行動に喜ぶと同時に呆れていた。
「おお!極上の美女じャねえカ!ってマジで見せちャっタよコイツ」
「お前が見せろと言ったんだろう、何だ不服か?」
「いんヤ、むしろ大満足」
またカカカカと笑う悪魔はその笑いを止め、悪戯を思い付いた少年の様な表情で顔を輝かせた。
「ナアナア、一つ提案しタいんダけどサ」
「何だ?」
「どうせそこ通しちャアくれナいんダろ?で、戦闘にナる訳ダ」
「ああ、その通りだな」
「いザ戦うってナっタラ俺とアんタじャア長い時間をカけることにナる」
「確かにな、長引くのは此方としては困る」
「奇遇ダナ、俺もダ。そこで戦闘を一発勝負にしナいカ?」
「ふむ。互いの最高の一撃を同時に放ち、競り勝った方の勝利で終わり、という事か?」
「おお、よく分カってんじャん!で、どうダ?」
「名案だ、それで戦ろうじゃないか!」
敵同士なのに何故か親しく話し合う二人は一定の距離を互いに取る。
「では準備をさせてくれ」
ユミカルトはそう言うと懐から小さい瓶を取り出し、栓を抜く。
中の水を自身に振り掛けるとたちまち身体中の汚れが無くなり、返り血で染まった装備も新品同様に綺麗になった。。
「おいおい聖水カよ、よく準備しタナ」
「悪魔にはよく効くだろう?」
ニヤリとユミカルトは不敵に笑い、ハルバートを構える。
「真名解放、《カルティウス》!」
呼応する様にハルバートは光り輝き、黄金のオーラを纏う。
それは昼のこの場所を更に照らす程、明るい。
「ナラ俺もダ。『全テノ世界ハ次元ノ中ニアリ――」
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