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初めて裕璃から声をかけてくれたのは、
俺に対する苦情だった。
「――あの、保健室の冷蔵庫に甘いお菓子を入れるの止めて下 さい」
「え!? 甘いもの駄目ですか?」
「俺はヘビースモーカーで甘いもの苦手です」
そう白衣の胸元をペンの先でトントン叩く。
真面目で優等生のように振る舞いながらも胸元に煙草を忍ばせて。
「その綺麗な顔で、ヘビースモーカーなんですね」
「綺麗な、は余計です」
でも本当にそう思った。
あの綺麗な唇が、煙草を咥えるのは艶かしい。
薄く開いたその唇に、あの煙草を……。
それは美しい光景かもしれないけど。
――いけない気持ちになる。
「先生、あの、少しは俺の話も聞いて下さい!」
「は?」
目の前の、裕璃とは正反対の男らしい顔がどUPで現れ、夢から覚める。
ああ、説教中でしたね。
「南野くんは……、勉強と部活に大変頑張っていますね。ラグビーの推薦で大学も決まってますし」
にっこり笑うと、南野くんは真っ青になった。
どうやら理解力もあるらしい。
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