十粒  すれ違い ー檜山ー

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わんわんと泣く薫ちゃんを放っておくわけにも行かず、せめてもとタクシーを呼んだ。 「おやすみ。ユーリ!」 「名前で呼ぶな!!」 薫ちゃんを部屋に招き入れながら、ちらりとユーリに目をやる。 寂しそうな傷ついた、くしゃくしゃな顔。 バタン。 ドアを閉めてもその顔は俺の心を抉る。 「薫ちゃん! ちょっと待ってて下さいね!」 薫ちゃんを玄関に押し込んだまま、急いで外に飛び出した。 「――ユーリ」 既にタクシーに乗り込む後姿だけが俺の目に映る。 ユーリ、君は。 君は呼び止めて欲しかったんじゃ、ないですか?
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