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わんわんと泣く薫ちゃんを放っておくわけにも行かず、せめてもとタクシーを呼んだ。
「おやすみ。ユーリ!」
「名前で呼ぶな!!」
薫ちゃんを部屋に招き入れながら、ちらりとユーリに目をやる。
寂しそうな傷ついた、くしゃくしゃな顔。
バタン。
ドアを閉めてもその顔は俺の心を抉る。
「薫ちゃん! ちょっと待ってて下さいね!」
薫ちゃんを玄関に押し込んだまま、急いで外に飛び出した。
「――ユーリ」
既にタクシーに乗り込む後姿だけが俺の目に映る。
ユーリ、君は。
君は呼び止めて欲しかったんじゃ、ないですか?
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