十一粒 挑戦 ー加賀美ー

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すると辺りをきょろきょろ見渡した後、ぶっと小馬鹿にしたように笑い出した。 「せんせー、なんかお兄ちゃんにされたの?」 「さぁ」 「なーんだ。だからか。急にお兄ちゃんおかしくなったんだ。せんせーに恋しちゃったのか。趣味悪っ」 本性を出した南野弟は、俺に敵意を剥き出したように喋りだす。 「お前のぶりっ子は嘘臭くて吐き気がしたが、本性は稚拙で馬鹿っぽくてお前らしいですね」 パソコンを立ち上げながらそう言うと、南野弟は舌打ちした。 「僕は、せんせー嫌い。嫌いというか、僕と同じで同性に狙われるなら、楽しんじゃえば良いんだ。嫌がるから傷つく。受け入れたら楽だよ」 「ああ、それは昨日まで俺もそう思ってました。さぁ、授業始まるんじゃないですか?」 南野弟がイライラしているのが分かったが、俺は別に心のケアは専門ではないし自分が患っているんだから、他人まで関わりたくない。
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