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「加賀美せんせーだけが檜山せんせーを憧れてると思わないでよ? 檜山せんせーに助けられて憧れてる生徒はいっぱい居るんだから」
その言葉は、まるで自分に言い聞かせるようだった。
唇を噛み締めながら、悪態を吐くような言い方。
これ、は演技では無理だと思う。
演技ではない表情だ。
「お前も、その大勢の中の一人ってわけですね」
「うるさい! 加賀美せんせーも勘違いして傷つかない方が良いんだからね!」
「――は?」
「昨日、檜山せんせーの家から出て来たじゃん。恋する乙女みたいな気持ち悪い顔で。
でもさ、檜山せんせーが進路指導室で何をしてるか知らないでしょ?」
居座る気なのか、向かいのソファにドカッと座り足を組みながら、そう言う。
その目はギラギラと濁った炎で燃えている。
進路指導室で檜山が何をしていても関係ないが、俺が恋する乙女みたいな顔をしていた事は否定させてもらおう。
ありえない。
「みんなに親切にするなら、特別なんて作ると、みんな傷つくんだ」
むかつくー……。
そう語尾を伸ばしながら、南野弟はポロリと本音を吐き出す。
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