十一粒 挑戦 ー加賀美ー

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ぴょんっ 小柄な体をソファから飛び立ち、「あっ」と小さく声を漏らした。 「当初の目的、忘れてた」 俺も忘れていたかった。 保健室のある南側の校舎。 小さな花壇や木が植えられた庭を挟んで向こう側の北校舎の2階。 スポーツ特待生や特進コースで構成された三年のクラスがある。 「こっち、こっち」 「――……」 此方をチラチラ注目する生徒をムスッと睨み付けながら、異様に廊下に生徒が出ているクラスの前に辿り着く。 「ゆ、楪くーん」 「先生を連れて来てくれてありがとーう」 「へへ。僕のお兄ちゃんが迷惑かけてごめんなさいだもん」 ギャルメイクの女子生徒に背中がぞくぞくと恐怖を感じながら、教室を覗いた。 俺を見て安堵の表情を浮かべる生徒たちの奥の窓際に突っ伏す坊主姿。 坊主は明らかに「ううー」と具合の悪そうな呻きを上げながら近づけないオーラを放っていた。 廊下に生徒が出ていたのはこの坊主が怖いからか。 ん……? 坊主……?
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