十一粒 挑戦 ー加賀美ー

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南野兄の熊みたいな筋肉もりもりの腕が、少しだけ動いた。 昨日無理矢理キスされて、散々八つ当たりはしたが。 それのせいでこんなに具合が悪くなったと言われたら、実に心外だ。 後味が悪すぎる。 「そんな頭にするから風邪を引くんです。皆に移ると大変迷惑だから、帰りなさい」 「お兄ちゃん、僕がお荷物纏めるね」 ぴょこぴょこ現れた南野弟がカバンをロッカーに取りに行く。 「ずっ……ずみ゛ま゛っ」 「――何?」 鼻声で濁音だらけの言葉は上手く聞き取れない。 すると、マスクをした坊主の南野兄はガバッと起き上がる。 「お゛れ゛、出家、じま゛ず!!!!!!!」 「は?」 「出家じで、煩悩や゛ら゛性欲や゛ら゛棄ででぎま゛ず!!」 こいつ。 熱で頭が可笑しくなったんじゃないか? 真っ赤なゆでダコみたいな顔でボロボロと泣く、南野兄。 遠巻きに見守る同じクラスの奴等にさえお構い無しみたいだ。 「でも゛帰りま゛ぜん゛っ」 「だから、迷惑ですって」 「この場所、保健室が良く見え゛るん゛です゛」
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