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南野兄の熊みたいな筋肉もりもりの腕が、少しだけ動いた。
昨日無理矢理キスされて、散々八つ当たりはしたが。
それのせいでこんなに具合が悪くなったと言われたら、実に心外だ。
後味が悪すぎる。
「そんな頭にするから風邪を引くんです。皆に移ると大変迷惑だから、帰りなさい」
「お兄ちゃん、僕がお荷物纏めるね」
ぴょこぴょこ現れた南野弟がカバンをロッカーに取りに行く。
「ずっ……ずみ゛ま゛っ」
「――何?」
鼻声で濁音だらけの言葉は上手く聞き取れない。
すると、マスクをした坊主の南野兄はガバッと起き上がる。
「お゛れ゛、出家、じま゛ず!!!!!!!」
「は?」
「出家じで、煩悩や゛ら゛性欲や゛ら゛棄ででぎま゛ず!!」
こいつ。
熱で頭が可笑しくなったんじゃないか?
真っ赤なゆでダコみたいな顔でボロボロと泣く、南野兄。
遠巻きに見守る同じクラスの奴等にさえお構い無しみたいだ。
「でも゛帰りま゛ぜん゛っ」
「だから、迷惑ですって」
「この場所、保健室が良く見え゛るん゛です゛」
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