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この先の事を言えば、きっと駄目になるのは分かっている。
だが、檜山は『信じる』とは言った。
言ったが、俺がどれだけ傷ついているかなんて理解してなかった。
そんな奴の言葉なんて、俺を傷つけるだけの上っ面な言葉だ。
滅茶苦茶に心を切り刻まれた気分で不快だ。
「――早退届提出しておきますから」
「あ゛の゛先゛生゛お゛れ゛、お゛れ゛」
チーンッ
南野兄はマスクで力強く鼻を噛むと、それをポケットに仕舞う。
「俺が『先生が誘うから』って、先生を傷つける言葉なんですよね! すみません。すみませんでした!!」
体育会系さながらに、90度に体を畳むように謝られるとその潔さに苛々してしまう。
「こんな過去があるなら、襲わなかったんですか?」
そう尋ねると、熊のように唸る。
「好きだから、何をするか分からない……っす」
体を折り曲げたまま、ばか正直に答えられてため息しかでなかった。
「――救いようのない馬鹿ですね」
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