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「加賀美先生っ」
キーケースを持って飛び出した俺を、檜山が呼び止める。
だが、振り返らず駐車場へ向かう。
もう知らない。
もうどうでも良かった。
「ユーリ!」
「っ!」
掴まれた腕がピリッと痛みだす。
「――今、仕事中なんでしょ? 名前で呼ばないで下さいね」
「その仕事中にどこに行くんですか!?」
なんでそんなに真剣に呼び止めるんだ。
呼び止めるなら、俺に言うことがあるだろう?
「お前にはがっかりしました。――俺はお前が許せない」
「ユーリ……」
「仕事中は名前は呼ぶな!」
睨んだ俺の腫れた目に手を伸ばす。
だがその手は触れる前に、宙で止まった。
いくら授業中で、車や木々で死角になったとしても、ここは学校の中の駐車場。
そうだ。檜山は『良い教師』なんだろう。
良い教師だがら、俺はそれに利用されるような立場でも文句は言えやしない。
「お前は、俺の事なんて結局分かろうとしなかった。だが、南野にとっては間違いを気づかせる良い教師なんだろうな」
「ユーリ。誤解だ。ちゃんと話をしよう」
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