十一粒 挑戦 ー加賀美ー

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「加賀美先生っ」 キーケースを持って飛び出した俺を、檜山が呼び止める。 だが、振り返らず駐車場へ向かう。 もう知らない。 もうどうでも良かった。 「ユーリ!」 「っ!」 掴まれた腕がピリッと痛みだす。 「――今、仕事中なんでしょ? 名前で呼ばないで下さいね」 「その仕事中にどこに行くんですか!?」 なんでそんなに真剣に呼び止めるんだ。 呼び止めるなら、俺に言うことがあるだろう? 「お前にはがっかりしました。――俺はお前が許せない」 「ユーリ……」 「仕事中は名前は呼ぶな!」 睨んだ俺の腫れた目に手を伸ばす。 だがその手は触れる前に、宙で止まった。 いくら授業中で、車や木々で死角になったとしても、ここは学校の中の駐車場。 そうだ。檜山は『良い教師』なんだろう。 良い教師だがら、俺はそれに利用されるような立場でも文句は言えやしない。 「お前は、俺の事なんて結局分かろうとしなかった。だが、南野にとっては間違いを気づかせる良い教師なんだろうな」 「ユーリ。誤解だ。ちゃんと話をしよう」
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