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「――仕事中にどこに行くつもりですか?」
そう尋ねられまるで責められているようで不快だった。
「滝澤教授のところです」
あの傷ついたような檜山の顔が脳裏から離れない。
まるで俺の方が悪いことをしたような気分だ。
そのまま高速に乗り、30分もせずに大学に着いた。
「教授、今日は大学に居ますか? 病院に居ますか?」
電話をそうかけると、迷惑そうにも忙しそうな素振りも見せずに、ふむふむと相槌を打つ声が聞こえる。
『研究室に居ますから、入ってきて下さい』
拒否されない。
受け止めてくれる。
今はそれだけで安心する。
気持ちが少しだけ軽くなる。
それと同時につまらない小さな事でも、すぐに傷付いた傷付いたと騒ぐ自分の弱い心に嫌気がさす。
少しだけ自惚れていたんだ。
檜山は俺に惚れているから、俺の気持ちも理解してくれるはずだと。
とても恥ずかしくなるぐらい自惚れていたんだ。
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