十一粒 挑戦 ー加賀美ー

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「――仕事中にどこに行くつもりですか?」 そう尋ねられまるで責められているようで不快だった。 「滝澤教授のところです」 あの傷ついたような檜山の顔が脳裏から離れない。 まるで俺の方が悪いことをしたような気分だ。 そのまま高速に乗り、30分もせずに大学に着いた。 「教授、今日は大学に居ますか? 病院に居ますか?」 電話をそうかけると、迷惑そうにも忙しそうな素振りも見せずに、ふむふむと相槌を打つ声が聞こえる。 『研究室に居ますから、入ってきて下さい』 拒否されない。 受け止めてくれる。 今はそれだけで安心する。 気持ちが少しだけ軽くなる。 それと同時につまらない小さな事でも、すぐに傷付いた傷付いたと騒ぐ自分の弱い心に嫌気がさす。 少しだけ自惚れていたんだ。 檜山は俺に惚れているから、俺の気持ちも理解してくれるはずだと。 とても恥ずかしくなるぐらい自惚れていたんだ。
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