十一粒 挑戦 ー加賀美ー

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「て、撤回して下さい! 檜山が一方的に近づいてきているだけです!」 「でも気分が良かったんでしょ? 何も心は見せないのに、少しでも分かってくれなきゃ飛び出すなんて君は彼の行為に甘えているんですよ。 友人としてでもいい、彼に君は何かしてあげましたか?」 「…………」 椅子に座り直しながら、足を組み変える滝澤教授を正面から睨み付ける。 滝澤教授は俺は考える事から逃げているという。 逃げているくせに檜山に甘えているのだと。 窓から見える空はまだ明るい。 いくら傷つけられたからといって、働きたくない職場だからといって、飛び出してきたのは社会人としては恥ずかしい行為ではある。 そんなに俺は自分の傷に酔っていたのか。 「あ、そんなに落ち込まないで。君は恋愛下手以前の問題だから」 「は?」 「ある意味童貞なんだから、欲情する気持ちが分からないんだよ」 「たっ!? 教授、先程から言葉がストレート過ぎます! 撤回しないと怒りますよ!」
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