十一粒 挑戦 ー加賀美ー

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「んー。君が怒っても電話やメールを無視するぐらいだから平気だよ」 ふふっと優雅に笑う滝澤教授は、俺の事なんて何もかもお見通しなんだ。 「過去の傷を守ろうと、色んなものに壁を作る君は痛々しい。でもね、それは君がぶつかって作った傷じゃない。誰かに付けられた傷だから」 「…………」 「ぶつかってみなさい。彼にぶつかって、自分で傷を作ると、案外楽になるものですよ」 引き出しからお菓子を少しずつ取り出しながら、笑う。 俺の悩みなんてちっぽけだと言わんばかりに。 渡されたチョコや飴やクッキーの甘さに隠れてしまうような。 教授がクッキーを絵になるような仕草で食べている時、机の上の内線が鳴り出した。 失礼、とクッキーの粉がついた右手を少し挙げて謝りながら、受話器を取る。 「えー。客が来ている? 困ったなー。アポなしさんとは今日は会う時間ないよ」 クッキーの粉を舐めながら、教授は苦笑している。 「え? 今はカウンセラー中なんだ」 『俺、帰りますよ?』 邪魔になるのは申し訳なくてそう言うと、教授は指で丸を作る。 「今から帰るみたいだよ」 え……?
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