十一粒 挑戦 ー加賀美ー

24/29

4235人が本棚に入れています
本棚に追加
/405ページ
カチャと受話器を置くと、窓を指差した。 「君にお迎えが来ているみたいだよ」 「えっ……?」 「下の君の車の前で待ってるみたい」 教授は珈琲を飲み干すと、樹海から立ち上がり二杯目の珈琲に手を伸ばした。 そして珈琲を注ぎながら、窓の簾を指で開く。 「いるいる。怖い顔でいるよー」 「……だ、誰が?」 「愛されてるねー。僕もまた青春したいなー」 ふむふむと頷きながら窓からこっちを向くと、手を握られ立たされる。 「さーて。僕は君の尻拭いで学校に電話しなくちゃ。さー出た出たっ」 「滝澤教授っ」 教授はウインクすると俺を研究室から追い出し、念入りに鍵までかける。 滝澤教授も意地悪、です。 でも、俺にぶつかれ、と言うのは教授と檜山だけだ。 まわりや家族は俺が殻に籠るのに反対しなかったから。 下に降りて、研究室を見上げると電話をしながら俺を見守る教授がいた。 まるで父親のように俺を受け入れてくれる教授。 俺は甘えてばかりだったんだ。 「…………」 腕組みをしながら、途中何度も腕時計を気にする檜山。 忙しい時間の合間だと匂わせる。
/405ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4235人が本棚に入れています
本棚に追加