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カチャと受話器を置くと、窓を指差した。
「君にお迎えが来ているみたいだよ」
「えっ……?」
「下の君の車の前で待ってるみたい」
教授は珈琲を飲み干すと、樹海から立ち上がり二杯目の珈琲に手を伸ばした。
そして珈琲を注ぎながら、窓の簾を指で開く。
「いるいる。怖い顔でいるよー」
「……だ、誰が?」
「愛されてるねー。僕もまた青春したいなー」
ふむふむと頷きながら窓からこっちを向くと、手を握られ立たされる。
「さーて。僕は君の尻拭いで学校に電話しなくちゃ。さー出た出たっ」
「滝澤教授っ」
教授はウインクすると俺を研究室から追い出し、念入りに鍵までかける。
滝澤教授も意地悪、です。
でも、俺にぶつかれ、と言うのは教授と檜山だけだ。
まわりや家族は俺が殻に籠るのに反対しなかったから。
下に降りて、研究室を見上げると電話をしながら俺を見守る教授がいた。
まるで父親のように俺を受け入れてくれる教授。
俺は甘えてばかりだったんだ。
「…………」
腕組みをしながら、途中何度も腕時計を気にする檜山。
忙しい時間の合間だと匂わせる。
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