十一粒 挑戦 ー加賀美ー

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「あと20分で俺は戻らなければいけない」 「――別に俺には関係ありません」 そう言ってそっぽを向くけど、檜山は運転席のドアに背もたれて動かない。 逃げ場を塞がれ、立ち尽くす俺を檜山はじっと見つめる。 「傷つけた事は謝ります。謝りますけど、もどかしい」 「謝っているようには聞こえません」 可愛いげのない返答をしてしまう――いや、この年になって可愛いげのある態度もどうかと思うが、全然檜山が喜ぶような反応を返してやれない。 「南野くんは発情してるだけだけど、俺はユーリの傷が癒えるのを待とうと思ってた。待てると」 何が言いたいのだろうか。 痛々しい、思い詰めた表情で。 「でも時間が経てば経つほど、ユーリは思い詰めて悪い方向にしか考えないから、心配なんだ」 スッと右手を差し出してきたので、つい一歩後ろへ下がってしまったが、檜山は更に右手を伸ばしてくる。 「ユーリから触れて。怖くないから、触れて。 嫌なら、許せないなら、関わりたくないなら、触れなくていい」 「は?」 「泣かせて傷つけたけど、謝って抱き締めて涙を拭く事もできないんだから、ユーリから触れて?」
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