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触れと言った癖に、自分から俺の腕を引き寄せると、そう言った。
「ユーリは自分を卑下しすぎてる。自分に価値が無いとでも?」
そう言いながら、俺の腕からするりと手を移動させ、指を絡めるように手を握りしめると口元へ引き寄せた。
「ユーリはちょっと……いや、かなり維持っ張りですけど、心根は純粋で綺麗です。だからこそ前に出て行かなくて苛々します。こんなに素敵なのに」
ま、まるで女を口説くような甘い台詞に、本当に俺の事を言っているのか不思議になる。
「手の甲に口づけするから。それが仲直りの印。嫌なら逃げて」
「は? 逃げるってお前、ぎゅっと握りしめてるだろ」
「だから俺の意思より強く振りほどけば良いんですって」
それは20分間のプロポーズ。
流れるように、性急、それでいてスマートに。
今朝の事を上手く誤魔化すような手腕。
こいつ、絶対に女の扱いが上手いと思う。
「いつでも振りほどけるが、此処まで探しに来た愁傷な態度に免じて見逃してあげます。
今回だけですからね!」
そう睨み付けると、檜山は甘ったるく笑う。
「ありがとう。ユーリ」
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