十二粒 嫉妬 ―檜山―

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「せんせーって加賀美せんせーと加賀先輩に甘いですよねー」 「は?」 進路指導室で、英語の追試問題を印刷している時だった。 南野弟が、頬を膨らませて上目使いで拗ねたように言う。 言う、というか恋人の浮気を追求している女性のような目をしている。 この歳でなかなか経験が多そうだ。 「甘くないですよ。スパルタです。加賀くんには特に」 「でも特に目をかけてるんだ?」 …………。 なんで只の生徒に、否定したり説明したりしなきゃならないのか。 ユーリになら何時間でも誤解を解くために説明するけれど。 「3年は受験で果敢な時期ですから、気になる生徒に指導して当然です」 「――そうなんだーぁ。じゃあ僕も気にしてよ」 パタン 後ろ手でドアを閉めて、意味ありげに南野弟は微笑む。 困ったな。 「悩みごとなら聞きますし相談に乗りますが、生徒は生徒ですからね」 「うん。僕恋人にならなくてもいいよ。好きだと思ったら欲しくなるだけ」
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