十二粒 嫉妬 ―檜山―

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「そんなの僕が欲しい答えじゃないもーん!」 「俺は君の先生になりたいが、恋人にはなりませんよ。さ、気を付けて帰って下さいね」 営業スマイルで強く拒絶したら、南野くんの表情がフッと変わった。 「あの加賀美って3年生が告白しても、そんな態度で追い払えるの?」 「そうですね」 「あの3年生が極地に立たされても先生としてしか助けないの? 王子さまみたいに助けない?」 「はい。言ってる意味は分かりかねますが王子さまにはなりません。君も、真面目な恋愛をしなさい。またお兄さんが泣きますよ?」 「お兄ちゃんは関係ないもん」 埒があかない、終わりのないやりとりに苦笑しつつも、パタンとドアを閉める。 そこまで俺に執着するのは、あの朝たまたま助けたからなのか。 だが、どうしても生徒は生徒でしかない。 面倒だとさえ思ってしまう。 俺はまだ上手く逃れられるが、不器用なユーリはまた南野兄くんのようになるかもしれない。 しかも。 彼は女の人が苦手で克服が難しそうだ。 もし恋愛のリハビリをする時、その相手は『男』だけになるんじゃないかな。
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