十二粒 嫉妬 ―檜山―

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一目で分かる。 加賀くんの目は甘く蕩けて、雨宮を見ていた。 恋をしているのは明らかだ。 最近、加賀くんが落ち着きなかったり授業中居眠りしたり、差し入れの甘い物を忘れたり、英語のテストが悪かったりしたのは、 全部全部、このせいなのか。 学生の恋は、甘い甘いケーキのよう。 回りが見えず、相手の一言や行動に一喜一憂する。 少し胸がチクチク痛む。 冷たくあしらってしまった楪くんも、こんな甘いケーキのような恋をして欲しいと。 みんな平等に幸せになって欲しい。 その為に、変わる努力をして欲しいんだ。 ついつい車に乗り込むと、ユーリに電話をかけてしまった。 見つめあう二人が羨ましくて。 何コールかして面倒そうに電話に出てくれたユーリ。 『お前、今どこに居るんですか?』 可愛いげのないツンツンした声も可愛いとさえ思ってしまう。 「今から帰るところです」 『ふぅん。……あのさ、明日は暇ですか?』 「え?」 『滝澤教授が親睦を深めるならホラー映画を観るべきだと言ってるんだが』
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