4231人が本棚に入れています
本棚に追加
/405ページ
「取りあえず、縄つけてでも連れて行きますよ」
「――何故、俺なんかを……」
冷たい瞳が少しだけ戸惑いで揺れていた。
そうか。この男にはストレートに言わなきゃいけないのか。
――計算やお世辞じゃ響かないと。
「俺たちの職場はチームワークが大事ですからね。
加賀美先生が誤解されないように俺はもっと貴方を知りたいです」
その冷たい瞳は、笑うとどうなるのか。
その冷たい言葉を放つ言葉は、優しい声も出してくれるのか。
「――……俺なんて」
「加賀美先生は魅力的ですよ」
なんでそんなに自虐的なのか分からないけれど。
なんでそんなに人を拒絶するのか分からないけれど。
「もっと、加賀美先生を教えて下さい。俺に」
不安そうに瞳を反らす加賀美先生に少しだけ苛立って、腕を取った。
「――あっ」
びくりと明らかに怖がって体を強張らせる加賀美先生にまた少し苛立つ。
あの生徒には怖がってなかったのに。
「は、離せ」
「じゃあ、一緒に行ってくれますよね?」
嫌そうな顔で渋々頷くと、手を振り払われた。
「だが俺は飲みませんから」
最初のコメントを投稿しよう!