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飲め、飲め、と薦められ美味しくもない安酒を飲まされる。
不機嫌にしたりぶっきらぼうにすると、途端に檜山が飛んできてフォローしたり間に入って話題を変えたり。
それが更に俺を不機嫌にさせる。
人が集まる場所は好きではない。
父や祖父、兄が医者でなかなか人間ができてるせいで、俺まで羨望の目を向けたりおべっかしたりするのも気にくわない。
――飲み始めて11時が過ぎた頃、終電組と既婚者組が帰る準備を始めた。
「加賀美先生は、二次会カラオケとかどうします?」
ペタリ
しなを作るように、磨かれた爪が光る手が俺の腕を触る。
日本史か国語か知らないが、ふんわりと巻かれたパーマにいかにも生徒に好かれそうな笑顔の……名前、なんだっけ?
「手」
「うん?」
可愛く首を傾けるその仕草にも背筋がゾワッとする。
「潔癖症なんで、手、触らないで下さい」
「あっ やだ。ごめんなさい」
慌てて手を離すが、俺の心臓を恐怖が握りしめる。
こ、んな、こんな綺麗な身なりをした女が特に駄目だった。
「どうしました? 加賀美先生」
また、ひょいっと割り込むこの男。
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