三粒  夜明け前 ーside加賀美ー

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飲め、飲め、と薦められ美味しくもない安酒を飲まされる。 不機嫌にしたりぶっきらぼうにすると、途端に檜山が飛んできてフォローしたり間に入って話題を変えたり。 それが更に俺を不機嫌にさせる。 人が集まる場所は好きではない。 父や祖父、兄が医者でなかなか人間ができてるせいで、俺まで羨望の目を向けたりおべっかしたりするのも気にくわない。 ――飲み始めて11時が過ぎた頃、終電組と既婚者組が帰る準備を始めた。 「加賀美先生は、二次会カラオケとかどうします?」 ペタリ しなを作るように、磨かれた爪が光る手が俺の腕を触る。 日本史か国語か知らないが、ふんわりと巻かれたパーマにいかにも生徒に好かれそうな笑顔の……名前、なんだっけ? 「手」 「うん?」 可愛く首を傾けるその仕草にも背筋がゾワッとする。 「潔癖症なんで、手、触らないで下さい」 「あっ やだ。ごめんなさい」 慌てて手を離すが、俺の心臓を恐怖が握りしめる。 こ、んな、こんな綺麗な身なりをした女が特に駄目だった。 「どうしました? 加賀美先生」 また、ひょいっと割り込むこの男。
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