十三粒 鈍感  ―加賀美―

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「――あら。ええ!? ――そう」 母の渋い声を聞きながら、俺も渋々と檜山に毛布をかける。 どうせ夜勤の医師たちに泣きつかれたんだろうけど、早く仕事に戻ればいいのに。 すると内線を切った母が眉をしかめながら俺を見た。 「裕璃さん。貴方の学校の南野猛さんってご存じ?」 「――!?」 「退院したくない、貴方に謝りたいとしくしく夜泣きしてるみたいなのよ」 忘れてた。 あいつ、俺のとこに入院していたんだ。 まだ入院していたのか。 「何をしたんだ、そいつは」 父さんも苦笑いだからきっと知ってたんだ。 「――生徒なんていっぱい居るから名前なんて知りません」 然り気無くブランデーを飲みながら、知らないふりをする。 「裕璃は綺麗だから告白ぐらいされたんじゃない?」 はははっと笑う兄さん。 なのに俺は、ガッシャンとワイングラスを落としてしまった。 動揺して、しまった。 「――そうなのね!?」 「あの熊みたいな奴が!?」 「えっ どれ? 俺外科だから見た事ない」 「行きましょう。案内するわ!」
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