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「――あら。ええ!? ――そう」
母の渋い声を聞きながら、俺も渋々と檜山に毛布をかける。
どうせ夜勤の医師たちに泣きつかれたんだろうけど、早く仕事に戻ればいいのに。
すると内線を切った母が眉をしかめながら俺を見た。
「裕璃さん。貴方の学校の南野猛さんってご存じ?」
「――!?」
「退院したくない、貴方に謝りたいとしくしく夜泣きしてるみたいなのよ」
忘れてた。
あいつ、俺のとこに入院していたんだ。
まだ入院していたのか。
「何をしたんだ、そいつは」
父さんも苦笑いだからきっと知ってたんだ。
「――生徒なんていっぱい居るから名前なんて知りません」
然り気無くブランデーを飲みながら、知らないふりをする。
「裕璃は綺麗だから告白ぐらいされたんじゃない?」
はははっと笑う兄さん。
なのに俺は、ガッシャンとワイングラスを落としてしまった。
動揺して、しまった。
「――そうなのね!?」
「あの熊みたいな奴が!?」
「えっ どれ? 俺外科だから見た事ない」
「行きましょう。案内するわ!」
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