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「君みたいな友人ができた事で、気持ちが大きくなったのかもしれないな。……酔った時だけは」
酔った時だけ……。
なら、俺が見張らなければいけない。
南野兄は何度も何度も頭を下げながら病室を出ていく。
俺は、――。
教師でありながら、生徒である南野に敵意を向けてしまいそうになる醜い自分を抑えて、南野兄にどんな表情をしていいのか迷う。
だから仕事と私生活は切り離したかったんだ。
私情を出したくないから。
「もう、無理はしないで下さいね」
そう余裕ぶって笑う自分に吐き気がする。
本当はそんな事、思ってもいないのに。
高校生に嫉妬や敵意を向けるのは大人げないと分かってるけれど、ユーリにキスして感情を不安定にさせた事だけは殴り飛ばしても許せない。
――教師じゃなければ殴っていた。
ユーリのご両親はそのまま勤務に戻るらしく渋々と部屋を出ていき、お兄さんも食事の片付けをするらしい。
「お前は……」
ユーリは俺に何か言いかけた後にふいっと横を向く。
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