十五粒 嫌がらせ ―加賀美―

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利用者一人と言っても。 「せんせー、恋の処方箋ってありますかー?」 「――頭の弱い人の薬はありません」 南野弟だからほぼ0だ。 火曜日のお昼休み。 からあげ弁当を頬張る俺の前に、ゆらりと現れやがった。 「今日は保健室甘くなーい。檜山せんせー来てないのー?」 「……さぁ」 ふぅん、と首を傾げると何故か意味ありげに視線を近づける。 「僕ね、3年の加賀って人の鞄に煙草入れてきたんだ」 ふふん、と得意気に弟は笑う。 「――馬鹿ですか?」 「檜山せんせーのジャケットに1本入ってたの見つけて」 「……?」 この前、俺の自宅で奪われたあの煙草かな? こいつ人のジャケットを漁って人のカバンに煙草を入れるなんて、何を考えてるんだ。 「檜山せんせーなら放課後の個人レッスンで加賀って人に会うでしょ? 気づいたらどうすると思う?」 「何が言いたいんですか?」 「あの3年が特別なら庇うと思うんだよね。僕」
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