十五粒 嫌がらせ ―加賀美―

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保健室から校舎を見上げたら、何故か檜山の授業中の姿が見えた。 長い指先でチョークを握り黒板に字を書いていく。 顔を横にして角度を変えてみると、黒板の字が見える。 ――檜山らしい綺麗でまっすぐな文字。 面白味もないぐらいな、完璧な字。 ちょっと潔癖に近い、やんわりと壁を作っている笑顔。 そんなアイツが俺に、触れる。 キスをしてくる。 膝枕をねだる。 ――なのに一週間会わなくても平気らしい。 賞味期限切れ近いプリン。 南野弟の仕掛けた罠。 話しかける話題はいっぱいある。 話しかなければならない話題はいっぱい……。 「でも俺から話しかけるのは腹が立つんですよね」 メールでも良いから奴から連絡があれば腹の虫が収まるものを。 放課後、進路指導室前。 大学推薦の面接指導をする時間。 偶然俺がそこを通って出会したら、檜山はどんな顔をするだろうか。 ――授業中みたいな先生の顔か、 ――俺の家でのだらしない顔か。
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