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「もう! せんせー遅いー。何をしてたのぉ?」
「……うるさい」
どっかの熊みたいな男が、退院して元気いっぱいなせいでラグビー部から怪我人や日射病予備軍が続出したんだよ。
そのせいで放課後のばったり作戦は出来ずに、でも未練たらしく覗きに行くと、南野弟がベランダから手招きしてきた。
「で、君はベランダから覗きですか? 悪趣味ですね」
「声が大きいって。それより聞いてよ。なんかせんせーが甘い声なんだから!」
煙草はどうなったのかには触れず、二人で耳を澄ます。
「加賀くんが好きなんですね。こんなに砂糖みたいに甘い香りの加賀 くんが」
ちらりと覗くとクスクスと怪しく笑う檜山がいた。
『砂糖みたいに甘い香りの加賀くん』?
俺は煙草の苦い香りしかしない。
「先生、あのそれであの、この前、キスしてたの はだ、誰にも言わないで欲しいんだけど」
そう慌てて答えているのは、南野弟の言う『檜山のお気に入りの3年の加賀くん』だ。
俺と違って、表情豊かで可愛い顔をしている。
「やっぱり。あの3年、恋人居るみたいだよ」
恋人がいる奴に、砂糖みたいに甘い香りだと口説くのか檜山は。
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