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「そうですね。その時は、とびっきり甘い物を頂 きます」
「とびっきり、甘い物……?」
不思議そうに加賀と言う奴が聞き返しているので更によく目を凝らしてみる。
カーテンの隙間から覗くと、俺は目を疑った。
檜山は加賀の結んでいる前髪を引っ張り、あの指で掴んで遊んでいる。
脅しているようにも見えたが、檜山の顔は楽しそうだった。
「清人でさえ好きになった、とびっきり甘い物で す」
キヨヒト?
よく聞き取れながったが、檜山は前髪を触っていた手を離し、頭をなで回した。
優しく慈しむように。
「――せんせーが触ってる。あの3年を触ってる!!」
南野弟がキーキー騒ぐのが遠くに感じられた。
だけど俺の中で動揺したのはそこでは無かった。
――お前の一番は俺じゃない。
あの手は、優しく違う人にも触れるんだ。
俺は。
酷い勘違いをする所だった。
お前を好きになって、
傷つきたく、ない。
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