十五粒 嫌がらせ ―加賀美―

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「お前、約束も守れないのか」 保健室に1週間近づかない。 そう約束したのに。 「ユーリが逃げるから」 じりじり近づいてくる檜山は、いつもの真面目な優等生の表情ではない。 眼鏡の奥がギラギラと光っている。 怖い。――怖い。 どうしたら檜山は俺じゃなくて、違う人を身代わりにしてくれるだろうか。 あの三年の身代わりを。 「煙草……、職員会議で言わなかったですね」 「――!?」 「この前飲酒が見つかった三年は推薦が取り消しになったのに」 「なんで煙草の事を……」 聡明な檜山はすぐに、大切なあの三年の事だと気づいた。 それさえも苛々する。 「俺と同じ煙草の銘柄じゃなかったですか?」 俺は檜山を妖しく笑って挑発した。 俺を軽蔑すればいい。 それで冷めて消えてくれたらいい。 「貴方の仕業なんですか? ユーリ」 カツカツと足音を立てて近づく檜山。 カーテンから差し込む光で表情が見れない。
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