4233人が本棚に入れています
本棚に追加
/405ページ
「まだ怒ってるんですか? 加賀美先生」
不機嫌そうな顔で、俺を蹴り起こした美人は煙草を吸っている。
「怒ってない。今は完全犯罪の計画を立てています」
不機嫌そう、じゃなく不機嫌なのは、俺が昨日キスしてしまったから。
酔うとすぐ眠ってしまうので、友人の一部からは苦情が偶に沸くんだ。一人限定だけど。
でも腹を割って話すには、お酒が一番だと思って、酔わないように気をつけたのに。
加賀美先生が、そこらの女性より綺麗な顔をしているのも悪いと思う。
「っち。髪に煙草の匂いが染み付いた。早く帰ってシャワーを浴びたい」
「シャワー、貸しますよ?」
「これを吸い終わったら帰ります!」
そう怒鳴ると、綺麗な指先で煙草を消した。
白く透き通ったその肌が、一睡もしてないという疲れからか、より一層艶や憂いが生まれて、
――なんだかイケない気持ちになってしまいそうだ。
「お邪魔しました。もう来ません」
「送りますよ」
足早に去る加賀美先生に、キーケースを取りながら慌てて追いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!