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「加賀美くん、空気が柔らかくなりましたね」
朝、校長が俺にそう言って来た。
「人見知りが激しいみたいですが、慣れてきたのかもしれませんね」
俺も当たり障りがないようにそう伝える。
「女子生徒は視界にも入れなかったのに、挨拶に頷いたらしいですよ」
「それは……びっくりです」
怖いから見ない。
怖いから拒絶する。
怖いから嫌われようとする。
ユーリは繊細で傷だらけの心なのに自分を守る方法は不器用だった。
だから、恐怖するはずの女性を視野に入れるだけでもすごい進歩だ。
――今すぐ頭を撫でてあげたい。
「やはり檜山先生の人柄ですね」
「いえ。俺は何もしていませんよ」
原因というか要因というか。
俺がユーリ以外に触れるのにヤキモチ焼いてくれるのは嬉しい。
……俺が影響して変わってくれたのなら尚更。
「檜山先生はお父さんによく似て、本当にこの職は天職だと思っていますよ」
「あはは」
「いつかは継がれるのだよね?」
そう校長にやんわり探られたけど、曖昧に笑って誤魔化した。
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