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南野弟とあの女の子を送った後、最後に檜山は俺を送った。
けれど、家の前に停めた車の中、檜山は俺の手を握ってきて、何か言いたげに瞳をせつなげに揺らす。
言葉を選んでいる。
俺の事を思って?
だから。檜山のネクタイを引っ張って、重ねるだけの軽いキスをした。
――友人の妹というには抱きついたりして、親密すぎじゃないか?
――男同士は体だけで楽なのは本当か?
そんな気持ちを、伝えるのが億劫で。
キスで塞いで、閉じ込める。
「そんな軽いキスで、ユーリは満足なの?」
「は?」
「言い訳するけど、ただヤりたい盛の高校生と一緒にはしないでほしい。俺は身体目当てなら女に手を出す方が楽なだから」
「……その言い方もあまり素敵ではないですけど」
ただ抱き締められた。ぎゅうっと。
檜山からは甘い香りがする。
人を恋焦がせるような、狂おしくなるような、
甘い媚薬のように俺を刺激するその香りで。
俺を包み込む。
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