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「なっ」
何でそんなっ
そんな事を言わなくちゃならないんだよ。
そう睨むのに、檜山はもっと俺を睨み付ける。
熱く、全身を舐められているような眼差しで。
「ユーリは言葉にして、もっと俺に愛されてる自覚を持つべきです。言って。この口で」
親指が俺の口をこじ開けるように侵入してくる。
なんで檜山がこんなに苛立ち怒るのか俺には分からず、怖い。
「震えてるけど、怖いの?」
「……やめっ」
「でも止めない。感情をぶつけられて怖いのは、ユーリが逃げて理解しようとしないからだ」
突き刺さるような視線に全身が熱くなる。
違う。
違うんだ。
俺は、檜山の立場を心配しただけだ。
家を継ぐ立場の檜山を俺は……。
「檜山……」
口の中が檜山の味がする。
じわりと広がった涙が、視界を奪っていく。
滲む檜山が、俺の口から指を離した。
「キスじゃ俺の気持ちが分かりませんか?」
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