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「それをね、正直に言えばいいんだよ。格好つけずに、ね」
素直に。
それが一番難しい。
自分を守るためならばいくらでも壁は作れるが、
壁を壊す檜山を待つのではなく、
俺が壁を取り外さなければいけないのだとしたら。
「考えすぎ。考えすぎ」
結局ご飯を食べただけで、真っ暗になった海を見ながら帰路に着く。
車の中でも窓の外ばかり見て考えていたら、教授に笑われた。
「ほら、悩むより先に、彼を安心させてあげなさい」
家のちょっと前の坂で、車は止められた。
「ほら、電話でもしてあげたら?」
ニヤニヤ笑う教授を睨み付けつつ、車から降りると、仕方なく。
仕方なく、スマホを取り出す。
電話は1コールで出た。
『ユーリ?』
「……今から会っても良いですけど」
『本当に!? やば。ワイン飲んでしまった…』
一瞬だけテンションが上がったかと思うと、すぐにションボリとそう返された。
なんだか誘った俺が罪悪感を植え付けられるぐらい。
「俺が車出しますよ」
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