十九粒 戸惑い  ー加賀美ー

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車でマンション前に着くと、電話を入れる前に既に檜山が立って待っていた。 黒のセーターにダボッとしたジャージを履いて、部屋着のままなんて、ちょっと檜山らしくない。 身嗜みに気が回らないぐらい動揺している? 「何ですか、その間抜けな顔は」 目をパチパチさせた檜山の顔を見るのは面白くない。 もうちょっと喜ぶと思っていたのに詰まらない。 「いや、ちょっとびっくりして。何かあの教授とあったの?」 「恋話だけですけど」 まだ信じれないのか俺の表情を伺う檜山に苛々が募る。 「乗らないんですか?」 「あ、乗るけど、なんか言われたから来たんじゃないの?」 まだ疑うのかと思ったら馬鹿らしくなってきた。 「自分の意思で来たのに。もう良いです。死んでください!」 「あ、ユーリ!」 エンジンをつけると窓を閉めた。 「待って!」 檜山はその窓に手を入れてきて阻む。
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