十九粒 戸惑い  ー加賀美ー

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「ごめん。拗ねた?」 ちょっとだけ意地悪げで楽しそうに笑う檜山がムカつくので発進させたら慌てて乗ってきた。 「来なきゃ良かったです。本当」 なんで、 ……会いたいなんて思ってしまったんだろう。 こんな奴に。 「ぎゅってしたい。車停めて、家に来て?」 耳元でそう囁かれたが睨み付ける。 「お前はそんな事しか考えてないですよね」 バカ。 そう言葉が漏れたけど、寂れた公園前に車を停めると檜山の方を見た。 「お前は、俺が男なのに戸惑わなかったんですか?」 「戸惑うってか男を好きになった事なんて初めてだよ」 檜山はシートベルトを外すと両手を広げて今すぐにでも抱き締めたいのかうずうずにじりよって来る。 「そのだらしない顔、近づけないで下さい」 手で顔を押しやりつつも、実は檜山に抱き締められるのは悪くないと思ってたりする。 人の温かさが気持ち良いと思えるのは、……檜山だけだと思う。
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