20粒 欲情 ー檜山ー

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「馬鹿っ!」 「あはっ ユーリ敏感!」 楽しげに笑ったのに、何故かユーリの口元は緊張して微かに震えていた。 「――今日は、お兄さんは?」 「出掛けてます」 「お父さんは?」 「……滝澤教授と連盟の会合です」 「じゃあ、さっき夜勤にお母さんが出ていかれたから、今はユーリだけなんだ?」 「――!」 耳元でそう囁くと、ソファから飛び上がり、急いで窓辺へと逃げる。 震える肩を抱くように立つユーリの背中は艶かしい。 「ごめん。意地悪だった?」 「――用が無いなら、俺はもう寝ますけど」 耳まで真っ赤にしたユーリに近づくと、怯えたように瞳を揺らす。 だけれど、それは期待も込めているような熱い眼差しでもあった。 「抱き締めたいなって思って。いい?」 「っ」 近づく度に、ユーリの震える唇や真っ赤な目元などがはっきり映し出されて、まるで誘われているのは俺の方じゃないかという錯覚に陥る。
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