4235人が本棚に入れています
本棚に追加
「馬鹿っ!」
「あはっ ユーリ敏感!」
楽しげに笑ったのに、何故かユーリの口元は緊張して微かに震えていた。
「――今日は、お兄さんは?」
「出掛けてます」
「お父さんは?」
「……滝澤教授と連盟の会合です」
「じゃあ、さっき夜勤にお母さんが出ていかれたから、今はユーリだけなんだ?」
「――!」
耳元でそう囁くと、ソファから飛び上がり、急いで窓辺へと逃げる。
震える肩を抱くように立つユーリの背中は艶かしい。
「ごめん。意地悪だった?」
「――用が無いなら、俺はもう寝ますけど」
耳まで真っ赤にしたユーリに近づくと、怯えたように瞳を揺らす。
だけれど、それは期待も込めているような熱い眼差しでもあった。
「抱き締めたいなって思って。いい?」
「っ」
近づく度に、ユーリの震える唇や真っ赤な目元などがはっきり映し出されて、まるで誘われているのは俺の方じゃないかという錯覚に陥る。
最初のコメントを投稿しよう!