諦めてキスをしよう。

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「……意外と早く見つかりましたね」 つまらない、といった表情で此方を見た。 「あんな領収書だけでは分からない!」 番地無し、おまけに高級住宅街。同じようなマンションだらけ。 なるべくユーリが好きそうな高めのマンションから探したのに。 意外と家族向けのマンションだとは思わなかった。 「もし中に入っていたら見つからなかったよ」 「わざとです。わざと」 フッとユーリは笑うと毛先をくるくると弄り出した。 「ちょっとはヒヤヒヤ焦れば良いなって」 「……本当? 逃げようとしたんじゃないの?」 「これを見てもそう思う?」 ユーリは足元に置かれたシャンパンと小さなケーキの箱を指差した。 「見つからなかったらケーキ、駄目になるところでしたね」 ケーキ。 買ってくれたのか。 「それに最上階の部屋は、エレベータにカードキーを差し込まなきゃ行けないらしくて。可哀想だから待っててあげました」 余裕そうな笑顔のユーリは、俺が息を切らして駆け付けたのが嬉しかったんだろう。上機嫌だ。 「俺も住んでいいの?」
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