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「ばっ馬鹿じゃないんですかっ こんなの」
「馬鹿だよ。ユーリ馬鹿。だから良いんだ」
足で開けた扉はムードは無かったかもしれないが、まずはゆっくりと玄関をくぐった。
「ここでキスするんだ」
――嘘だけど。
「目、閉じて」
信じきったユーリは、言われるがままに目を閉じる。
その鋭い眼差しが閉じられると長い睫毛が影を落とし、綺麗なのに俺は淫猥を感じさせられ胸が高鳴る。
触れる口付けは、……辞めたはずの煙草の匂いがした。
あの寒空の下、煙草を吸いながら俺をひたすら待つユーリの姿が浮かぶ。
「キングサイズベットはどこ?」
「……それも習わし?」
「ううん。いきなり初夜コースに突入したいだけ」
「!!」
暴れだすユーリを、紫のシーツの上品なベットへゆっくりと下ろした。
「……シャンパンとケーキを持ってくるから、良い子で待ってて」
前髪を横に分けて、額に口づけると名残惜しげに立ち上がる。
――ユーリが買ってくれたケーキじゃなきゃ、放置してやったのに。
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