一粒  トラウマ

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「加賀美せんせー、俺のプリンは無事で……」 目を丸めた驚いた顔をする男。 お前、そんな顔もできるんだな。 保健室の冷蔵庫を私物化するこの英語教師の 檜山(ひやま)。 口元の黒子が色気があるとガキ供が噂してたが、 あの銀のフレームの眼鏡が真面目でストイックな印象を漂わせている。 「檜山先生。はやく助けてくれますか?」 「あ、え? 先生、生徒に襲われてたんですか」 ポカンと間抜けに開けた口を、コイツが格好いいと噂してるガキ供に見せつけてやりたい。 「俺が生徒を誘ったと思ったんですか!?」 「先生は無意識にその目で俺を誘ってます!」 「――君、黙りなさい」 檜山は急に真面目な顔になると、自分より背の高い熊を片手で引きずり起こした。 「ちょっと生徒指導室に来て下さい。南田くん?」 ああ。そうか。 この熊は南田(みなみだ)。下の名前は知らないけどな。
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