七粒  侵入ーSide加賀美ー

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「加賀美先生」 優しくそう呼ばれた声は、嫌ではなかった。 それまでのざわざわした気持ちや、ドロドロした記憶が、消えていく感じで。 「……檜、山先生?」 ボーッとする意識の中、そう目の前の奴を呼ぶ。 「大丈夫ですか?」 にっこりとそう笑うのは、間違いなく俺に酔ってキスした馬鹿檜山。 「加賀美先生、保健室の床に倒れてたんですよ? 大丈夫ですか?」 「――そうか」 俺を覗き込む檜山の向こうの時計を見た。 まだ昼休み内だから、30分も倒れては居なかったようだ。 ――長い長い悪夢だったのに。 「泣いてたから、慌てて洋服が乱れてないか確認しました。南野くんに襲われたかと思って」 クスクス笑うが、今、その冗談は笑えなかった。 「すまない。助かった」 不本意ながらもコイツのお陰で悪夢から覚めたのも事実だからな。 「加賀美先生が素直だと、とても可愛いですね」 「――殴りますよ」 睨むと、檜山は真剣な瞳になった。
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