七粒  侵入ーSide加賀美ー

6/9
前へ
/405ページ
次へ
「一人で抱え込まないで、何でも相談して下さいね」 そう、優しく言われたら胸がざわざわ痛む。 「ただの同僚に言う話では、ありません」 「へぇ。……そうですか」 ピキピキと空気が凍るのが分かった。 「ただの同僚以上になれば良いんですね?」 伸ばされた手に体を揺らすが、檜山は緩めた首元のボタンを直してくれただけ。 なのに触れる指先は熱くて。 触る指先は、優しくて。 「土曜日、また腹を割って話しましょう」 「い、嫌だ」 「嫌なら迎えに行きます。病院の方に」 「!」 「俺、5限は空きなんです。テストの採点は後回しにしますんで送りますね」 そう言うと、ケーキを冷蔵庫から取り出して食べ始。 テープを剥ぐとそのまま、フォークも使わずかぶりつく。 「そんな、そこまで迷惑かけれません。定時までは居ますっ」 「もう校長には伝えています」 「――っ」 良い大人が倒れて早退するなんて、なんて失態だ。 「大丈夫ですよ。偶には自分の身体も大切にして下さい」 そう言うと、ぺろっと手についた生クリームを舐めとる。
/405ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4234人が本棚に入れています
本棚に追加