4237人が本棚に入れています
本棚に追加
バシャバシャバシャバシャ
汚い感触を洗い流しながら、フッと自分の腕を見た。
――あの野郎。
くっきりと腕に赤い痕が浮かんでいる。
発情するのは勝手だが、俺を巻き込まないで欲しい。
だからガキは嫌いだ。
理性より本能や好奇心が勝つ、経験不足のガキは。
『君にしかもう頼む人が居なくてね』
大学時代、こんな性格だから本当に迷惑かけて世話をしてもらった恩師の頼みだ。
恩師の頼みじゃなかったら、妊娠にも気づかない馬鹿保健師の代わりに俺は臨時に入るつもりは無かった。
切迫流産で絶対安静だとか、俺には関係無い。知らない。
――くそ。駄目だ。消えない。
熊に触られた腕から、黒い感情が俺の全身を這いずり回る。
怖い。汚い。
恐怖心が消えない。嫌悪感が拭えない。
高校時代のトラウマが、未だに体を震わせる。
「――煙草吸いに行こう」
全面禁煙が義務化されたこの学校の、
使われていない三階の視聴覚室。
そこで煙草を吸うのが俺の今の楽しみだった。
最初のコメントを投稿しよう!