八粒  決戦夜 ―檜山―

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「……何ですか、その不満そうな顔」 「いいえ。偶には俺にも笑って下さいね。加賀美先生。ほら」 笑えと念を飛ばすが、加賀美先生は怪訝そうな顔をするだけ。 「笑顔なんて振りまけますか! 送って頂いてありがとうございました」 でも律儀に御礼を言う辺りが育ちの良さいうか、人柄が出ていると思う。 もっと仲良く、親密になりたいが、気持ちだけ焦っても仕方ないんだろうな。 頑ななその心、侵入できるならば持久戦でも構わない。 この気持ちは、……。 歩く加賀美先生の後ろ姿を見たら、狂おしい気持ちになる。 あの背中を後ろから抱き締めたい。 同じ職場なんて面倒なだけなのに。 この心の暴走は止まらないらしい。 まるで、初めて恋を知った青春中の少年のように。
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