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「……何ですか、その不満そうな顔」
「いいえ。偶には俺にも笑って下さいね。加賀美先生。ほら」
笑えと念を飛ばすが、加賀美先生は怪訝そうな顔をするだけ。
「笑顔なんて振りまけますか! 送って頂いてありがとうございました」
でも律儀に御礼を言う辺りが育ちの良さいうか、人柄が出ていると思う。
もっと仲良く、親密になりたいが、気持ちだけ焦っても仕方ないんだろうな。
頑ななその心、侵入できるならば持久戦でも構わない。
この気持ちは、……。
歩く加賀美先生の後ろ姿を見たら、狂おしい気持ちになる。
あの背中を後ろから抱き締めたい。
同じ職場なんて面倒なだけなのに。
この心の暴走は止まらないらしい。
まるで、初めて恋を知った青春中の少年のように。
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