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それにしてもこれは、酷い。
答案用紙を見ながら、今日の授業中に眠っていた加賀くんの姿を思い出した。
風に揺れる前髪、こくりこくりと顔を動かしては慌てて頬を叩く、必死さ。
加えて、英単語の小テストの分からない単語を『スイーツ』だの『ホットケーキ』だの甘い物ばかり書く悪気の無さ。
採点中にお腹が空くなんて。
早く終わらせて、加賀美先生が逃げる前に車に乗せなきゃいけないのに。
大切な親睦を深める金曜日なのに。
「加賀くん。ちょっと来なさい」
下駄箱でもたもたしている加賀くんを捕まえる。
明らかに『ヤバイ』と顔を真っ青にする加賀くん。
あーあ。加賀美先生もこれぐらい素直だったら良かったのに。
「先生が言いたい事、分かりますよね?」
「し、新作ケーキの事かなぁ~~。あはは」
「それは後でじっくり聞きますね。それより」
小テストの点数を見せつけながら言いました。
「次、こんなふざけた点数を取ったら分かってますね?」
「ひ~~」
あわあわしている加賀くんを苛めたら少しだけ溜飲が下がった。
この調子なら、加賀美先生と落ち着いて語れそうだ。
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