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駒子が立ち上がり、声がしたほうを見ると、屋敷の屋根を伝って、一人の泥棒が、大きな風呂敷包みを抱えて、屋根を伝って逃げようとする姿がみえた。
「逃がすかあー!」
駒子は全力で泥棒を追いかけるため走り出した。
つられて、パチくんと、加古川さんも走った。
そして、駒子は、いつも護身用として、着物の袖の中に入れてある、
ピンク色で細長い、棒状の爆竹を数本取り出し、マッチで火をつけた。
泥棒に向かって思い切り放り投げると、爆竹は、泥棒のいる屋根の傍に当たり、バーンという空気を切るような大きな音がして、火花が散った。
泥棒はびっくりして、屋根から転げ落ち、風呂敷包みの中身であるキラキラした宝石類が、地面の上に散らばった。
犯人は、足を花壇に置かれたレンガで切ったのか、血を流し、落ちた場所にうずくまっていた。
「ほら、あんた、男なんだから、逃げないように一緒に押さえつけなさいよ」
駒子はパチくんに命令し、二人がかりで泥棒を押さえつけた。
加古川さんは、犯人を押さえつける駒子とパチくんの姿を見て、走って大人たちを呼びに行った。
その時、パチくんは限界だった。
すさまじい味のするチーズの味が口の中にのこっていたし、血を見るのも、泥棒を押さえつけるのも恐怖だった。
加古川さんに呼ばれて大人たちが駆けつけたとき、パチくんは安心感からか、張り詰めていた意識がゆるみ、気を失った。
その場に居合わせた大人たちの手によって、泥棒は縛られ、警察に引き渡された。
泥棒は、誕生日パーティーで皆が庭に出ている間に、加古川家の屋敷に入り込み、宝石を盗もうとしたらしい。
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