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駒子は、屋敷の本館と、使用人たちが住む屋敷の離れを繋ぐ、渡り廊下を歩いていた。
パチくんの部屋をノックしても返事がないので、ドアをそっと開いてなかに入り、ベッドの傍に腰掛ける。
「あら、まだ寝ているのね」
駒子はそう言って、パチくんの頭を撫でた。
パチくんは、とっくに目を覚ましていたのだが、駒子がいつもと違って、とても優しいので、狸寝入りをしていた。
「私…」
駒子が、声を詰らせた。
「すっごい、すっごい、私、心配したのよ。
だって、パチくん、あの場で急に倒れるんだもん。
私のせいで死んじゃったらどうしようって…。
それに、私にとって、大切に思える人は、お父様と、ユクさんと、馬のアレクサンダーと、パチくんのお父さんの修一さんと、それにパチくんぐらいしかいないのよ。
昔はお母様もその中に入っていたけど、私が5歳のとき亡くなってしまった。
これ以上大切な人がいなくなるなんて、私、耐えられない…。
お願い、早く目を覚ましてよ…」
大粒の涙が、一粒、パチくんの頬に落ちた。
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