無敵のお嬢様参上!

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大好きな家族に会えず、さみしい駒子の心を、馬は暖かく受け止めてくれたのだ。 「お嬢様、また、こちらにいらっしゃったのですね。ピアノのレッスンはどうされたのですか」 声がする方を振り向くと、駒子専属の執事である、鉢元渡がちょっと怒ったような顔つきで立っていた。 彼の父親の鉢元修一が、駒子の父親の専属の執事をしており、その関係で駒子の執事になったのだ。 「あはは、サボったのもう、パチくんにバレちゃうなんで、私も運が悪いわね」 駒子は、同い年の執事の少年に、本人の了承を得ないまま、勝手にあだ名を付けて呼んでいた。 「鉢元(はちもと)」の「鉢」を「ぱち」となまらせて、「パチくん」と呼んでいたのだ。 「あんまり、ユクさんを困らせるのもどうかと思いますよ。旦那様から、直接お叱りを受けるのは、あなたではなく、ユクさんなのですから」 「だってー、ピアノって超つまんないんだもん。良家の子女の嗜みってお父様が言うから仕方なくやってたけど。長い時間じーっと座ってるなんて耐えられない」 駒子は呆れ顔のパチくんの頬を両手で引き寄せまじまじと顔を見つめる。 「ところでさあ、パチくんって、ほんとに綺麗な顔してるよね。彫りの深い顔立ちに、マシュマロみたいな白い肌、長いまつげ。女の子っていっても、十分通じるよね」 駒子が顔をさらに引き寄せると、パチくんは頬をかすかに赤らめ、困ったように視線を泳がせた。駒子がふざけて頬に軽く口をつけると、パチくんはびっくりしてあとずさりした。 「な、なにをするんですか」 パチくんは真っ赤になって、キスされたほうの頬を押さえていた。 「なにって、ちょっとほっぺにキスしただけじゃない。外国では挨拶の代わりにほっぺにキスするのよ。ムキになっちゃって、馬鹿みたい」 「ムキになってなんかおりません。このような行為は、ご夫婦か、将来を約束した婚約者同士がするものですよ。それなのに、あなたはふざけてあんなことを…」
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