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翌朝の通学途中でのこと。
駒子は自分の教科書やノートの入った重い通学鞄をパチくんに押し付け、女子中学校まで送らせていた。
パチくんは、駒子の通う中学校のすぐ近くにある、男子中学校に通っていたので、
自分の分と駒子の分の鞄を両方持たなくてはならず、かなり重そうだ。
パチくんの通う中学は、本来なら、セレブの子供しか通うことができなかったが、
パチくんの成績がとてもよかったため、駒子の父親が後ろ盾になり、進学することが出来たのだ。
「昨日のことなんだけど…」
駒子が切り出した。
「ピアノの先生とユクさんに、女装がすぐにバレるなんて、あんた、どんだけ要領悪いのよ」
「あれは、ハエが…」
窓から入ってきたハエのことを、パチくんは言い訳しようとしたが、駒子は許さなかった。
「言い訳なんて聞きたくないわ」
駒子は、パチくんの柔らかな白い頬をつねり上げた。
パチくんが痛っと声を上げる。つねられた箇所は、じんじんと熱を帯び、頬紅を着けたように、ほんのり赤みを帯びている。
「まあいいわ。これで大嫌いなピアノのレッスン、なくなるだろうし」
駒子は、女子中学の近くに着くと、ありがとうの一言も言わずに、
「はやく、鞄渡してよ。他の人に見られると恥ずかしいから」
と言ってパチくんから鞄をひったくり、校門の中に消えて行った。
駒子が教室に入ると、クラス一噂好きな、加古川杏里がさっそく話しかけてきた。
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