目覚める魔王 バイト中の勇者

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「店長、録音に行ってきます。覗いたら……どうなるか分かってるわよね」 録音とは隠語であり、音入れ=おトイレと客にどこに行くか分からないようにするためのものである。 ここは南大陸の中央にあるミクス王国の城下町にある商店街。人間界特産の肉や魚、野菜が売られているだけでなく、魔界にある薬草を売る魔族や自らの再生能力を生かして、その場で尻尾を切って、その場で焼いてくれる魔獣の店など様々な店などが並んでいる。 そんな商店街から少し離れた脇道にある店、機界に存在するレアメタルだけでなく、魔界や人間界のマニアックな物が置かれてる小さな雑貨屋で勇者エリスはアルバイトをしていた。 エリスは長く綺麗な紅い髪に、同じ色の瞳。十六才で身長は165とスラッとした姿をしており、美人の部類に入る。男からは胸さえあれば見た目は完璧なのにと言うほど、エリスの胸は見事に平原が広がっている。そして、バイト中であるからなのが、髪をポニーテールにしていて、エプロンを肩に掛けている。 「分かっている。そのふりは見に来いというふりだな」 片言のような喋り方をするのは機人の店長。少し前にエリスの着替えを覗き、頭を箒で飛ばされたのだが、すぐにはめ直して仕事に戻っている。この店長は何度も覗きをして、カギをかけても意味がなく、エリスが着替える前に頭を飛ばして、直す前に着替えるという時間勝負。何度も続くので、エリスが覗きを発見した場合、その日の時給を倍にするように要求すると、簡単に承諾する変態店長。 「本当に……私だからこんなので済んでいるんだから。普通なら捕まって当然だと分かってよね」 この店は店長とエリスの二人で切り盛りしている。エリスが辞めずに、この店長を訴えないのにも理由がある。エリスはラキアス学園には特待生で入っているのだが、アルバイトは特定の条件で許されているものの、学生は学業を優先するものと付近で雇ってくれる店がここしかないのだ。
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